学際編幕間①

ポラリス魔法学園学祭・番外編 ちーちゃんのお出かけ

━そこは、古代神竜たちが静かに暮らす竜の神殿。

「ありがとう、ふーちゃん」

「どういたしまして。とてもお似合いですよ、ちーちゃん」

猫耳パーカーを着せてもらい、嬉しそうにくるりと回るちーちゃん。
それを満足げに眺めるふーちゃんの表情も、どこか柔らかい。

「どこかへお出かけですか?」

「うん!ちょっとそこまで!」

軽やかにそう言うと、ちーちゃんはそのまま神殿の外へと駆けていった。

小さく手を振り、にこやかに見送るふーちゃん。

――その背後に、いつの間にか三つの気配が現れる。

「では、手筈どおりに」

「万が一があっては困るからな」

「……まだあの子は小さい。目を離すのは不安です」

静かな声が重なる。

ただ一人、動こうとしない影に向かって、ふーちゃんが視線を向けた。

「あなたは行かなくていいのですか?前回は一番に動いたのに」

「いいんだよ。今回はもう十分すぎる戦力だ」

気の抜けた声で、その影は肩をすくめる。

「私は休んでるよ」

その言葉に、残る三人は無言で頷き――
ちーちゃんの後を、音もなく追った。


「ミホたちに会いに♪ 学祭へ♪」

弾む足取り。
神殿の外の世界に、ちーちゃんはすっかりご機嫌だ。

「あっ、ドラゴンだ!」

指差した先には、竜騎士と一頭の飛竜。

「かわいいお嬢様だね。お出かけ?この子はエリスって言うんだよ。気性が荒くて――」

竜騎士が苦笑しながら紹介する、その途中。

「……エリス?」

普段は誰にも懐かないはずの飛竜が、
ゆっくりと頭を垂れていた。

まるで――目上の存在に対するように。

「エリスちゃん、いい子だね!お仕事がんばってね!」

無邪気な笑顔でそう言い、ちーちゃんは手を振って去っていく。

残された竜騎士は、ただ呆然とその背を見送るしかなかった。


「早くミホたちに会いたいな♪」

その足取りは軽い。

――だがその周囲には、誰も気づかぬまま。
過剰すぎる“護衛”が、静かに影を落としていた。