ポラリス魔法学園学祭・番外編 ちーちゃんのお出かけ
━そこは、古代神竜たちが静かに暮らす竜の神殿。
「ありがとう、ふーちゃん」
「どういたしまして。とてもお似合いですよ、ちーちゃん」
猫耳パーカーを着せてもらい、嬉しそうにくるりと回るちーちゃん。
それを満足げに眺めるふーちゃんの表情も、どこか柔らかい。
「どこかへお出かけですか?」
「うん!ちょっとそこまで!」
軽やかにそう言うと、ちーちゃんはそのまま神殿の外へと駆けていった。
小さく手を振り、にこやかに見送るふーちゃん。
――その背後に、いつの間にか三つの気配が現れる。
「では、手筈どおりに」
「万が一があっては困るからな」
「……まだあの子は小さい。目を離すのは不安です」
静かな声が重なる。
ただ一人、動こうとしない影に向かって、ふーちゃんが視線を向けた。
「あなたは行かなくていいのですか?前回は一番に動いたのに」
「いいんだよ。今回はもう十分すぎる戦力だ」
気の抜けた声で、その影は肩をすくめる。
「私は休んでるよ」
その言葉に、残る三人は無言で頷き――
ちーちゃんの後を、音もなく追った。
「ミホたちに会いに♪ 学祭へ♪」
弾む足取り。
神殿の外の世界に、ちーちゃんはすっかりご機嫌だ。
「あっ、ドラゴンだ!」
指差した先には、竜騎士と一頭の飛竜。
「かわいいお嬢様だね。お出かけ?この子はエリスって言うんだよ。気性が荒くて――」
竜騎士が苦笑しながら紹介する、その途中。
「……エリス?」
普段は誰にも懐かないはずの飛竜が、
ゆっくりと頭を垂れていた。
まるで――目上の存在に対するように。
「エリスちゃん、いい子だね!お仕事がんばってね!」
無邪気な笑顔でそう言い、ちーちゃんは手を振って去っていく。
残された竜騎士は、ただ呆然とその背を見送るしかなかった。
「早くミホたちに会いたいな♪」
その足取りは軽い。
――だがその周囲には、誰も気づかぬまま。
過剰すぎる“護衛”が、静かに影を落としていた。